踏み出した先にあるもの 4




「…それで、何をすればいいんですか」

「さすが私の息子ね。スザクもそう思うでしょ?」

「はい、ルルーシュ殿下は素晴らしいお方です」


 いきなり矛先を向けられたスザクは、憎らしいことに卒なく答えている。笑顔で相槌をうつなと怒鳴り

たくなった。


「霊水の噂は聞いているかしら?」

「あの、どんな万病にも効くというやつでしょう。知ってますよ」


 誰が言い出したのか噂は瞬く間に広がり、一時期偽物まで出て大変な騒ぎになった代物だ。


「今度は本物よ」

「怪しすぎます。情報はどこからですか?俺は聞いていません」


 それが本当なら、今頃は前以上に大変な騒ぎがおこっているはずだ。ルルーシュが知らないはずはない。


「私達以外は誰も知らないの。手がかりを見つけたのは、あなたもよく知っている人物よ」

「俺が知っている人間…?」


 そう聞いて、視線はスザクに向く。それを見たルルーシュ以外の皆が、同時に溜息を吐いた。

 どうしたというのだ。


「そこで彼しか思い浮かばないところが、あなたらしいわ…。いいえ、スザク以外よ。ヒントは…、彼の上

司にあたる人かしら」


   それはヒントと言わないのではないだろうか。


「そう、ロイドとセシルよ。さすがよね、場所まで特定したの」

「あの二人なら不思議ではないですが…」

「それでね、ルルーシュ。あなたには霊水探しをお願いしたいのだけど」

「あえてお聞きしますが、母上。それは決定事項ですね?」

「もちろん。手配もすでに済ませてあるわ」

「…準備のよいことで」

「抜かりはないわ」


 綺麗で、それでいて一切の拒否を許さない笑顔を向けられた。ルルーシュは長い溜め息を吐いた後、いか

にも不本意ですといった顔を隠さずに返事をする。


「分かりました」

「よかった。断られたらどうしようかと思っていたの」

「全然そんなこと考えていませんでした、と顔に書いてありますよ、母上…」

「あらあ、そんなことはありません」

「…行ってきます」


 気がつけば、食後の紅茶がテーブルに並んでいた。自分は食事を楽しむどころではなかったと、ルルーシュ

は溜息を吐いて席を立つ。


「お兄様。お気をつけて。」

「ああ、大丈夫だよナナリー」

「枢木、頼んだぞ」

「スザク、頑張ってくださいね。応援していますから」

「ルルーシュ、スザク、頑張るのよ」

「…?」


 皆からかけられる言葉の中に、意味が理解できないものがあるのは何故だろう。


「努力します」


 意味が分からないルルーシュと違って、スザクは困ったような顔で答えていた。後で聞いてみようと思いな

がら、自分もとりあえず頷いておく。


「それでは行ってきます。スザク」

「はい」

「頑張ってくださいね、お兄様」

「頑張りなさいな」

「頑張ってくださいね、二人とも」

「男を見せろ、枢木」

「…やっぱりなにかおかしくないか?」


 にこにこと、満面の笑顔で送り出してくれるナナリー達の様子にいささか不安になりながら、ルルーシュは

食堂を後にしたのであった





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