幸せなんです

      幸せなんです




        絵に描いたような文句なしの晴天と心地よい風。

        降り注ぐ陽射しは柔らかく、庭に咲く色とりどりの花は見る者の心を癒してくれる。いつもと変わらぬ、

        平和で穏やかな一日。

        けれどその中でも昨日とは違っていることがあった。それは、ルルーシュが手にしているこの書類を最

       後に、今日の仕事が終わることだ。この先、一生ないといっていいほどの貴重な日に、正直ルルーシュは

       内心でかなり浮かれていた。


        「…終わった」


        サインし終わった最後の書類を決裁済のボックスへと置きながら、ルルーシュは珍しく声に出してほっ

       と息をついた。背伸びをすれば、ずっと同じ姿勢だったために体中が痛い。ルルーシュは首と肩を回して

       体をほぐし、時間が勿体無いとばかりに急いで机の上を片付け始めた。片付けるとはいっても、ペンやイ

       ンクを引き出しにしまうだけですぐに終わる。それを見ていたようなタイミングで、スザクが執務室に入

       ってきた。

        ルルーシュを見て、おやっと眉を上げる。


        「珍しい。終わったんだ」

        「ああ」

        「あれだけの量を…、やっぱりルルーシュはすごいね」

        「いつもよりは少ないだろ。それに追加書類がなかったからな。まさかお前が持ってきたってことはない

        よな」

        何も持っていないことを確認して、意地悪く聞いてやる。スザクが苦笑して、両手を上げた。


        「ご覧の通りだよ。じゃあ、これから出かけない?ピクニックとか。どう?」

        「そうだな…天気もいいし、たまには外で食べるのも気持ちよさそうだ」


        スザクの案に頷いて、ルルーシュは腰を上げた。残念ながらナナリーは多忙なルルーシュに代わってユ

       ーフェミアが気分転換にと避暑地に連れて行ってくれているため一緒には行けない。しかし、だからこそこれか

       らの時間をスザクと二人で過ごせるのだと思うと、ナナリーと行けないことを残念だと思う気持ちとは別

       に、心が弾むのは止められなかった。


        「じゃあ、決まりだ」

        「久しぶりに弁当でも作ってみるか」

        「え?本当に!?」

        「スザクさえ嫌じゃないならな。まあ、久しぶりに作るから味の保証はしないが」

        「嫌なわけないじゃないかっ!!それにルルーシュの料理は美味しいし、味付けも文句なし!心配なんて

        するわけないよ!じゃあ早く行こう、ルルーシュの弁当が僕を呼んでいる!」


        ルルーシュの手作り弁当だと聞いて、スザクがますます元気になり始めた。嬉しそうにルルーシュの彼

       の腕を取って、スキップしそうな足取りで執務室の扉を開ける。

        目指すは厨房だ。


        「サンドイッチもいいが、やっぱりおにぎりにするか」

        「僕はどっちも好きだよ」

        「なら今回は特別に、スザクの好きな物を作ってやろう」

        「本当!?うわーじゃあねえ、おにぎりに卵焼きでしょ…定番のタコウインナーははずせないよね。

        それから……」


        ルルーシュのひと言がかなり嬉しかったのか、スザクが満面の笑顔であれもこれもと指を折りながら食べたい物

       をリクエストしてくる。


        「全部作ってやるよ。ただし、残すのは許さないからな」

        「僕を誰だと思ってるの。君が作ってくれたものを残すわけないじゃない」

        「上等だ」

        「楽しみだな〜。本当に楽しみだよ。ゆっくり過ごそうね、ルルーシュ」


        そう言ったスザクの顔が本当に嬉しそうで幸せだったから、ルルーシュは自分も同じだと顔を赤くしなが

       ら言葉を返して、スザクにしか見せない笑顔を浮かべて手を握ってやった。






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