愛は偉大

  愛は偉大




「ほわあ!?」


 それなりに忙しかった政務を終えて、今日も昨日と同じように自室へと戻ってきたルルーシュ。

 最近のお気に入りである葉を入れてお茶を楽しもうと考えながら扉を開けた彼は、しかし後に続いて部屋に入った

己の騎士の突然の行動に、変な声を上げて固まるのであった。


 な、なにがどうなっているんだ!?

 部屋に入った途端に抱きついてきたスザクに目を白黒させながら、ルルーシュは一生懸命手を伸ばして抵抗していた。

 息がかかるくらい近いスザクの顔から逃れるようにジタバタと暴れて頑張るが、がっちりと体に回された腕は動かない。

 反対に力が強まるばかりで、もしかして抱きつぶされるんじゃないかと、ルルーシュは青くなった。


「す、スザク…っ」

「ん?どうしたの、ルルーシュ」


 いつもの爽やかな笑顔を浮べたスザク。いや、普段の五割増しくらいかもしれない笑顔がとても怖い。

 だからこそ余計に必至だった。はっきり言ってルルーシュの抵抗など彼には可愛いものだろうが、このままでは

よくない展開になるのは決まっている。そう思って睨みつけるルルーシュに、けれどスザクは右手を腰へと移動させてきた。


「…ま、待て…」

「ルルーシュ」

「な…、んっ…」


 流されてなるものかと、ルルーシュはスザクの手を剥がそうとする。そんな動きも、スザクの唇が耳に移動して耳朶を

柔らかく噛まれたことで力が抜けた。背筋によく知った震えが走る。声を出したくなくて口を塞ごうとすると、両手を彼

に捕られてしまった。


「ルルーシュ」


 囁くように名前を呼ばれて、震えが大きくなる。眼尻に涙が浮かんだ。


「や、やめろ、ばか…!」


 それが分かっているのに、気がつけば軽がると持ち上げられ、ベッドに押し倒されている。相変わらずの手際のよさ

にルルーシュが睨んでも、スザクは嬉しそうに笑うだけだ。

 与えられる僅かな刺激にすら熱くなってしまう自分の体にルルーシュは悔しいやら恥ずかしいやらで、せめて真っ赤

に染まった顔を逸らした。口を開いたら絶対に変な声が出るのが分かっているため、後で覚えてろと心の中で毒づくのは

忘れない。

 そんなルルーシュの様子に、スザクが笑顔の質を変えたのが目の端にうつる。

 ようやく解放された両手。


「……お前はそういう奴だよな…」


 そう小さく呟くと、肩を竦めたスザクに頭を何故か優しく撫でられた。

 小さい子供にするように頭を撫でるスザクに大きな溜息を吐いて睨みつければ、笑っている彼の顔が視界いっぱいになる。

 眉をしかめることすら嬉しいのか更に笑顔になっていくスザクに複雑な気分になりつつ、ルルーシュは頬に許して、とキス

を落とし首を傾げてくるスザクに苦笑した。


 ――本当に、どこまでこの男に甘いんだ。

「…手加減しろよ」


 最後の最後で悔し紛れに呟きながら、それでもルルーシュは目を閉じて先を促す。

 彼は返事のかわりに、優しいキスで答えてくれた。










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