愛しかった人よ

      愛しかった人よ




          「一番大切で、一番好きだよ」


          いつだったか、僕が君に告げた言葉。

          本当ならもっと気の利いた言葉があるんだろうけれど、その時の自分には精一杯の言葉だった。

          君の一番はナナリーだと知っていたし理解もしていたから、自分と同じじゃなくても好きだと答

          えてくれるだけで嬉しかった。思いが通じ合った後もどうしたらいいのか分からないくらい途惑って

         しまうくらいに。



          ねえルルーシュ。僕はね、ずっと君達兄妹を守りたいと思っていたんだ。

          君たちを傷つけるすべてのものから守りたいと。

          だけどきっと――それ以上に、僕は君の隣りに立ちたいと願っていたんだろう。

          なのに僕は、僕と違う考え方をしていた君の話をあまり聞かなかったね。

          もっと僕らは話をすべきだったのかな?

          本当はさ、君の変化には早くから気付いていたよ。気付いていながら見ないふりをしていただけ。

          だって、僕は知りたくなかった。あの時の僕はそれを考えないようにしていたから。

          君が知られないように必死に隠していた――笑顔の下の現実を。





          「…でも……」



          それも終わりだ。

          僕達の道はどこかで違い、交わることができないところまできてしまった。



          「……っ…」

 

          だから、僕は戦うよ。君と。



          けれど、もう少し、もう少しだけ許してほしい。すぐに憎しみという気持ちで心をいっぱいに

         するから。

          胸の痛みとも、泣くことも、これで最後にするから。どうか、確かにあった彼との思い出に涙

         する自分を見逃してくれ。



          どれくらいそうしていたのか。

          ランスロットの中で、自分が呼吸する音が聞こえてくる。ようやく、音が戻ってきたようだ。

          閉じていた目を開いて顔を上げる。その目にはまだ涙が流れていたが、乱暴にぬぐうと携帯を取

         り出した。

          ゆっくりとした動作で、目的の番号を画面に表示させる。

          大きく深呼吸。

          大丈夫、手の震えも止まりつつある。



          「…ルルーシュ…」



          ――さようなら。



          最後に愛しかった人の名を呼んで、僕は携帯電話のボタンを押した。







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